おはようございます。kinystaです。
今日は2026年1月19日、月曜日。また新しい一週間が始まりました。憂鬱な月曜の朝ですが、通勤電車の中でスマホをかざして改札を通る時、ふと思います。「これ、本当に便利になったのか?」と。
前回、【前編】では2004年の「おサイフケータイ」誕生による、夢のような「オールインワン時代」の幕開けについて語りました。携帯一つで電車に乗り、コンビニで買い物ができる。あの時、私たちは確信しました。「未来では、財布なんて持ち歩かなくていいんだ」と。
しかし、現実はそう甘くありませんでした。その後に待っていたのは、企業のエゴがぶつかり合う「規格乱立(戦国時代)」と、スマホへの移行による「機能の退化(暗黒時代)」でした。
今日は、私たちが一度手にした「理想」がどのように崩れ、面倒くさい現実に飲み込まれていったのか。怒りと哀愁の2000年代後半〜2010年代前半を振り返ります。


第5章:流通の巨人が目覚める(2007年)
「キリン」と「犬」の参戦
2007年。電子マネーの歴史における、運命の年です。SuicaとEdyで平和に暮らしていた私たちの前に、流通業界の二大巨頭が立ちはだかりました。
- nanaco(ナナコ):セブン&アイ・ホールディングス(キリン)
- WAON(ワオン):イオン(犬)
彼らは言いました。「うちの店で買い物するなら、うちのカードを使ってね。ポイントあげるから」
ここから、私たちユーザーにとっての「悪夢の分散」が始まります。セブンイレブンに行くときはnanaco。ジャスコ(イオン)に行くときはWAON。電車はSuica。コンビニ(am/pmなど)はEdy。
「統一してくれ」という悲鳴
「ふざけるな!」と、当時の私は叫びたかったです。せっかく「おサイフケータイ」で財布を薄くしたかったのに、今度はアプリやカードの種類が増えていく。残高も分散するから、「あ、nanacoには300円しかないけど、WAONには2000円ある。でもここはセブンだ……」という悲劇が頻発しました。
決済音もカオスでした。「ピュリーン!(nanaco)」「ワオン!(WAON)」「シャリーン!(Edy)」「ピピッ!(Suica)」
レジ前は動物園かオーケストラか。私たちは、単にスムーズに買い物がしたかっただけなのに、いつの間にか「ポイント」という餌に釣られ、複数の電子マネーを管理させられる「奴隷」になってしまったのです。この「規格乱立」の呪いは、2026年の今もなお、QR決済に形を変えて続いています。(本当に、国がリーダーシップをとって一つにまとめてほしかった……)
第6章:高すぎた「モバイルSuica」のハードル
そして、もう一つのストレスが「モバイルSuica」でした。今でこそ誰でも使えますが、サービス開始当初(2006年〜)の仕様は、若き日の私にとってあまりに過酷でした。
「年会費」という名の通行料
覚えているでしょうか?当時のモバイルSuicaは、「年会費1,030円」がかかりました。(※JR東日本の「ビューカード」を持っていれば無料でしたが、それ以外は有料)
「えっ、電子マネーを使うためにお金を取られるの?」これには愕然としました。さらに、「銀行チャージ」のハードルも高かった。対応している銀行が限られていたり、キャリア決済(電話料金合算)の手数料がかかったり。
学生や、クレジットカードを持っていない層にとって、モバイルSuicaは「高嶺の花」でした。「便利になりたければ、俺たちの指定するカードを作れ」そんな殿様商売を見せつけられ、私は泣く泣く年会費を払い、あるいは券売機で磁気定期券を買い続けました。あの頃の「使いづらさ」は、今思い出しても胃が痛くなります。
第7章:黒船襲来と「暗黒時代」(2008年〜)
iPhoneという「退化した未来」
そして2008年。すべてを破壊する「黒船」がやってきました。iPhone 3Gです。
スティーブ・ジョブズが掲げたそのデバイスは、美しく、革新的で、インターネットそのものでした。しかし、私たち「おサイフケータイ信者」にとっては、信じがたい欠陥品でした。
「FeliCaが入っていない」
赤外線もない。ワンセグもない。そしてSuicaもEdyも使えない。当時の私には、これが「進化」だとは到底思えませんでした。「なんで未来の電話なのに、改札を通れないんだ?」「なんで自販機でジュースが買えないんだ?」
「カード収納ケース」という敗北
それでもiPhoneの魅力に抗えず、機種変更した友人たちがどうしたか。彼らは、iPhoneケースの裏側に「物理的なSuicaカード」を挟んでいました。改札を通るたびに、不格好に分厚くなったiPhoneをタッチする。時には干渉防止シートが機能せず、改札で引っかかる。
それを見て、ガラケー(P506iCの後継機)を握りしめていた私は思いました。「ああ、人類は退化したんだな」と。機能的には、明らかに数年前に戻ってしまった。Webは見やすいけれど、生活の「足」としては不便極まりない。これが、日本のキャッシュレス普及を数年遅らせた「スマホ暗黒時代」です。
第8章:Androidの逆襲と「全部入り」の復活
ここで、私がなぜ頑なに「Android派」なのか、その理由が明らかになります。iPhoneユーザーがカードをケースに挟んで四苦八苦していた頃、Android陣営(特に日本メーカー)は、ガラケーの魂を継承しようと必死でした。
2010年、auから発売されたシャープ製「IS03」。そしてドコモの「LYNX 3D」、「GALAXY S」(初期はおサイフなしでしたが、後に対応)。
「ガラスのマース(板)」と呼ばれたスマホに、無理やりFeliCaチップを埋め込み、赤外線をつけ、ワンセグを載せた。動作はカクカクで、バッテリーは半日しか持たず、カイロのように熱くなりましたが、それでも彼らは叫んでいました。「スマホでも、改札は通れるんだ!!」
私は、迷わずAndroidを選びました。iPhoneのお洒落さよりも、「改札を通れること」「コンビニでスマホ決済ができること」を選びました。それは、一度味わった「おサイフケータイ」の便利さを、絶対に手放したくなかったからです。
この時期、Androidユーザーであることは、ある種の「意地」でした。「iPhoneいいな〜」と指をくわえつつも、「でも俺、スマホでジュース買えるし」と自分に言い聞かせる日々。あの頃のAndroid端末の不安定さと愛おしさは、今の洗練されたPixelやGalaxyにはない「戦友」のような感覚です。
中編の結び:便利さは戻ったが、カオスは深まった
その後、iPhoneもついにFeliCa(Apple Pay)に対応し、ようやく世界に平和が戻りました。しかし、「規格の乱立」という深い傷跡は残ったままです。
スマホ一つで買い物ができるようにはなりましたが、スマホの中には「PayPay」「楽天ペイ」「d払い」「au PAY」「Suica」「PASMO」「nanaco」「WAON」……と、無限のアイコンが並んでいます。
「これ、本当に便利なんですか?」「一つのアプリ、一つの通貨で、どこでも払える未来は来ないんですか?」
次回、完結編となる【後編】では、突如として現れた「QRコード決済」という名の黒船、100億円をばら撒いたPayPayの狂乱、そして2026年の今、私たちが辿り着いた「キャッシュレスの最終形態」について語ります。
同居人に「あんた、またポイント目当てで余計なアプリ入れて!」と怒られながらも、ポイ活に励む私の涙ぐましい日常と共にお届けします。
それでは、月曜日の仕事、頑張りましょう。行ってきます(複数の電子マネー残高を確認しながら)!
